冬になると多くなる猫の泌尿器系の病気(概要編)

By | 2016年11月18日
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今回は、冬になると発症したり、悪化することが多い猫の泌尿器系の病気についてです。
猫ちゃんの代表的な病気の一つでもある泌尿器系の病気について、飼い主の皆さんもしっかりと知っておきたいですね!

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猫に多い泌尿器系の病気とは!?

実は、猫は犬と比べると泌尿器系の病気が多い動物です。その代表的なものとして、慢性腎疾患、下部尿路疾患があります。

猫の祖先はもともと砂漠で暮らしていたと考えられています。砂漠では水分が少ないため、少しでも体に取り込まれた水分をキープし、有効利用する必要があります。そのために重要な働きをするのが腎臓です。

腎臓は、体に溜まった老廃物を尿に排泄する役目をもつ臓器ですが、さらには、老廃物と一緒に排出された水分を「再吸収する」役割もあります。つまり、腎臓は体の外へ出て行く水分を抑えて、体内に留めることができる臓器なのです。ですので、砂漠で暮らす動物は、少ない水分でも生きていくことができるのですが、中でも腎臓の働きはとても重要であり、猫はその典型的な動物なのです。
しかし、猫の腎臓は犬や人と比べると、ネフロンと呼ばれる機能を司る構造が少ないと言われています。ネフロンは、腎臓にある糸球体や尿細管と呼ばれる微細な構造で構成されており、ネフロンの単位で水分の再吸収などの働きを担っています。つまり、腎臓はこのネフロンが無数に集まっている臓器なのですが、ネフロンが破壊されると、腎臓の機能は低下してしまいます。
猫は、このネフロンが他の動物と比べて少ないため、何らかの原因でネフロンが障害を受けると、それをカバーするための他のネフロンの数が少なく、どんどんと腎臓の機能が低下してしまい、慢性腎疾患に陥ると言われています。

また一方、少ない水分を有効利用するために、腎臓で水分を再吸収させると、その結果、いわゆる「濃い」尿が作られます。濃い尿は、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルの濃度も高くなるのですが、実はそのミネラル成分がが膀胱や尿道で結石となって、各部位の粘膜を傷つけ、血尿を引き起こし、さらには頻尿などの下部尿路疾患の症状を引き起こす要因にもなっています。

 

冬になると多くなる泌尿器系の病気の訳

冬になると、猫のお水を飲む量が減ってしまいます。
明確な理由は不明ですが、おそらく、寒さによる体温低下を防ぐために、冷たいお水を飲まないようにしていること(とはいえ、温かいぬるま湯にしてもあまり飲むようにはならないようです)や、運動量が低下することで代謝量も落ちてしまい、代謝に必要な水分量が減ること、さらにはトイレを我慢してしまうことによるものと考えられています。
それにより、腎臓機能を維持するための血流が少なくなってしまい、慢性腎疾患は悪化しやすくなります。

さらにはより濃い尿が作られるようになるため、尿石症などによる下部尿路疾患の発症リスクが高くなってしまいます。
その結果、「慢性腎疾患」と「下部尿路疾患(尿石症)」は冬に悪化したり、発症したりすることが多い病気と言えます。

 

慢性腎疾患ってどんな病気?症状は?

では、まず慢性腎疾患とはどんな病気なのでしょうか?

猫の慢性腎疾患は、高齢猫に多い病気の一つで、上記の通り、腎臓の機能が低下することで発症します。通常は突然発症するというよりは、徐々に病気が進行するため、発症初期にはほとんど症状を示さず、なかなか慢性腎疾患にかかっていることに気づかないことも多いです。

しかし、ある程度症状が進行すると、お水をたくさん飲んで、その分たくさんの尿をする「多飲多尿」と呼ばれる症状や、体重減少、毛艶の悪化、嘔吐などを認めるようになります。さらに進行してしまうと「尿毒症」と呼ばれる、非常に重い症状を引き起こします。尿毒症になると、元気食欲の低下、嘔吐、口臭、口内炎などを認め、ひどい場合にはけいれん発作なども見られるようになるため注意が必要です。

 

下部尿路疾患ってどんな病気?症状は?

次に、もう一つの冬に多い病気、下部尿路疾患とはどんな病気なのでしょうか?

猫の下部尿路疾患は、血尿や頻尿、排尿時の痛みなど、いわゆる「膀胱炎」の症状を示す病気です。

猫の下部尿路疾患の主な原因には、細菌感染、尿路結石(膀胱や尿管、尿道に石ができる病気)などがありますが、実は最も多い原因が「特発性」すなわち原因が不明の下部尿路疾患です。
これにはストレスが関係していると考えられていますが、今のところ明らかなメカニズムは分かっていません。
また、これらの原因以外にも老齢猫ではがんなどが原因になることがありますので注意が必要です。

さらに下部尿路疾患の中でも、尿道閉塞という尿が出なくなってしまう症状は、時間がたてばたつほど命の危険にさらされるため、猫がなんどもトイレで排尿姿勢を取るけれど、尿が出ている様子がない場合は、急いで動物病院を受診するようにしましょう。中でも雄猫の尿道結石では、容易に閉塞を起こしますので、十分に注意しましょう。

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愛猫を守るためにも、きちんとした知識を持っておくことは大切ですね!

次回は、慢性腎疾患と下部尿路疾患についてより詳しく治療や予防についても学んでいきたいと思います!
次回もお楽しみに!

冬になると多くなる猫の泌尿器系の病気(治療・予防編)はこちら!

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画像参照(http://www.flickr.com/photos/87805257@N00/29568677653、http://www.flickr.com/photos/126397594@N03/25592583686)

Category: ケアについて その他 病気・症状

About わんだほー先生

ペットくすりの公式キャラクターがお送りする、犬や猫のお薬や病気・健康維持についてのブログです。 ブログの内容は、獣医さんの監修ですが、同じ病気でも症状や個体差等により対応が異なることもあります。大切なペットのことですので、お薬の投与や症状に関しては、必ず実際に診察を行い獣医師の判断に従うようにしましょう。

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