こんにちは、オクスリラボです。
前回に引き続き、『熱中症』についてお届けします!今回は猫バージョンです!
猫の熱中症は、初期症状に気づきづらいことが多く、重症化して来院されるケースが目立ちます。
私の病院では、犬ほどは熱中症にかかる割合は多くないように感じますが、猫の熱中症も重度の場合は、命にも関わってきます。
暑い時期の熱中症対策は、猫でもしっかりと行ってあげてください。
猫は外気温の影響などで体温が上昇すると、呼吸によって熱交換をし、体温を下げようとします。そのため、体温が上がってくると、「ハッ、ハッ、ハッ」というような速い呼吸をするようになります。
しかし、それでもうまく体温調整できず、さらにひどくなると口を開けたままになり(開口呼吸)、舌を出した状態になります。
また、心拍数、脈拍数も上昇します(心拍数は胸に手を当てることで鼓動に触れることができます。脈拍数は、後ろ足の内股の付け根に触れられる場所があります)。
このように、体温が上昇した時にはまず呼吸や循環器の症状が見られるようになりますが、さらに熱中症が進行すると、よだれを垂らし、おしっこが出なくなり、嘔吐、血便、意識レベルの低下など重篤な症状が見られるようになります。
そして熱中症の治療が遅れるとショックを起こし死に至るようになるため、なるべく初期症状で気づいてあげるようにしましょう。
ちなみに呼吸器や循環器の症状は、もちろん他の病気でも同じような症状が見れることがあります。
しかし、熱中症以外の他の病気も、心筋症やフィラリア症(猫にもフィラリア症があります)など非常に厄介な病気が多いので、呼吸器、循環器の症状が見られた時は、熱中症に限らず、速やかに動物病院を受診することをお勧めします。
人間は、暑くなると汗をかき、汗と一緒に熱を放出して体温を下げることができます。
しかし猫は人間のように汗をかくことができず、体温調節が人間ほど上手ではありません。
また、スフィンクスのような毛のない猫種以外では、いわゆる毛皮のような被毛を持っており、保温効果が非常に高いため、体にこもった熱が非常に逃げにくくなっています。
そのため、ちょっとした生活空間の温度上昇が、熱中症を発症させてしまいますので、十分な注意が必要です。
特に猫は、犬のように車でお留守番をすることは少ないので、外出中の熱中症は多くはありません。
そのため、猫の熱中症のほとんどは自宅で発症しています。例えば、おうちではケージの中でお留守番をする猫では、ケージ内に熱がこもってしまうことで熱中症にかかることがあります。
また、お家の中を比較的自由に移動している猫でも、老齢になって、活動量が落ちてくると、暑い部屋の中から動かずに、そのまま熱中症を発症してしまうこともあるようです。
また、病気が熱中症をかかりやすくしていることもあります。やはり気管支炎や心筋症などの呼吸器や循環器の病気は、熱中症が容易に悪化してしまいます。
また、肥満の猫も注意が必要です。さらには、糖尿病や慢性腎疾患など、脱水症状を引き起こす病気では、より重篤な熱中症にかかりやすく、よりしっかりとした熱中症対策が必要になります。
まずは猫の生活空間の温度湿度をコントロールするようにしましょう。
特に猫は狭い空間、あるいは熱がこもりやすい高い場所で休むことも多く、エアコンなど空調が行き届かないこともあるため、猫がいる場所が暑くなっていないか、湿気がこもっていないか、飼い主の方が直接確かめるようにしましょう。
また、脱水症状が熱中症を悪化させてしまうこともありますので、水分をしっかりと補給できるようにしましょう。とはいえ、猫は自分から積極的にお水を飲むことはあまりありませんので、お水を飲ませるにはある程度の工夫が必要です。
例えば、猫は水飲み場は一カ所よりも複数カ所ある方が、水分摂取量が増えると言われていますし、キャットフードもドライよりもウェットの方が、同じ水分量でも尿量が増えると言われています。ですので、そのような対策で水分をしっかりと取れるようにしましょう。
もちろん、慢性腎疾患や糖尿病などの病気を持っている猫は、非常に脱水症状を起こしやすいので、病態が悪化しないように日頃の治療をしっかりと継続するようにしてください。
猫の熱中症は、人間の手で予防対策を行うことで、予防できます。
前述の熱中症対策のところでお伝えしましたが、猫の生活空間の温度湿度管理を徹底していただくことはもちろん、一日の太陽の移動に合わせて、日当たりが変わりますから、猫も時間帯ごとに日の当たらない場所に移動できるよう、生活空間の中の動線を作ってあげることも良いでしょう。
また、猫の体調を細かく把握できるように、普段から、呼吸数や心拍数などをチェックしてあげると良いです。
休んでいる時などの安静時、遊んでいる時などの活動時で、呼吸数や心拍数が大きく変動しますので、普段からのそれぞれの基準を把握することで、熱中症の初期症状に気づきやすくなります。
呼吸数は猫の胸の動きを見ることで測定することができます。また心拍数は猫の左胸にそっと手を当てて、心臓の拍動を触知することで測定できます。呼吸数も心拍数も、1分間あたりの回数を測定します。
また、定期的な健康診断を受けて、糖尿病や慢性腎疾患などの熱中症に大きく関わる病気を早期発見、早期治療を行うことも、結果的に熱中症の予防につながります。
猫が熱中症になってしまった、あるいは熱中症が疑われる場合は、すぐに動物病院に連絡するようにしてください。
また、猫がぐったりしている、意識が落ちているなど、重度の熱中症の場合は、お家での応急処置が必要です。
応急処置では、十分に濡らしたタオルを猫の体に被せて、扇風機を当てるようにしてください。また、タオルで巻いた保冷剤を脇や内股の付け根に当てて、なるべく早く動物病院に搬送するようにしてください。
できれば体温計で体温を測定した方が良いですが、猫の体温測定は肛門で測定する必要があり、体温測定での刺激が過度に興奮させてしまうことがあるため、無理に測る必要はありません。それよりもできるだけ早く動物病院に搬送できるようにしましょう。
また、応急処置の際、猫の意識がある場合は、興奮して、人間を引っかいたり、噛んだりすることもあるため、処置の際は飼い主の方が怪我しないように注意することも重要です。
猫の熱中症は、重症化した場合、回復したとしても後遺症が残ることもあります。腎臓の障害や視力障害、場合によっては傾いて歩くといった神経症状などが後遺症となることがあります。後遺症のレベルによっては、日常生活に支障をきたすことも多いため、熱中症はなるべく予防するように、日頃からの対策を心がけてください。
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