前回は、冬になると多くなる泌尿器系の病気(概要編)をお送りいたしました!
まだ、読まれていない方は病気のことが分かりやすくまとまっていますので、是非ご覧ください。
⇒「冬になると多くなる猫の泌尿器系の病気(概要編)」
今回は、猫の泌尿器系の病気で冬に悪化しやすい「慢性腎疾患」と「下部尿路疾患(尿石症)」の治療・予防についてご説明します。
前回もご説明しましたので、簡単に書かせていただきますが、猫の慢性腎疾患は高齢猫に多い病気の一つで、腎臓の機能が低下することで発症するものです。
発症初期はほとんど症状が現れないため、病気に気づかないことも多く、病気が進行するとお水をたくさん飲んで、その分たくさんの尿をする「多飲多尿」と呼ばれる症状や、体重減少、毛艶の悪化、嘔吐などが認められるようになります。さらに進行すると「尿毒症」と呼ばれる、非常に重い症状を引き起こします。
慢性腎疾患の治療は、残念ながら完治させる方法はありません。腎臓移植や再生医療など研究レベルの治療はあり、一定の成果が見られることもありますが、治療のほとんどは、症状を改善させることと、腎臓の機能をできるだけ長持ちさせることが主な目的となります。
具体的な治療としては、輸液療法、いわゆる点滴を行います。より症状が重いほど輸液療法が重要になり、入院や通院による長期間の治療が必要になることも多くなります。
中には大学病院など、透析療法を行うことができる動物病院もあります。透析療法は輸液療法と比べて、より短期間で血液中の老廃物(本来は尿と一緒に体の外へ排泄されるもの)を除去し、体への負担を取り除くことができるものですが、まだまだ実施できる施設は限られています。
その他の治療としては、降圧剤や腎臓病用の食事、窒素化合物やリンの吸着剤などを使用します。これらは血圧を下げたり、腎臓に負担となるナトリウムやタンパク質を制限したり、窒素化合物やリンを吸着することで、腎臓の負担を減らす目的で使用します。急性の症状を改善させるには、輸液療法や透析療法が有効ですが、腎臓の機能を維持させるためには、これらの薬物療法、食事療法が重要です。しかし、これらの治療は「悪化させない」ことが目的ですので、輸液療法のようにダイナミックに症状が改善するわけではありません。ですので、ついつい日常の治療としておろそかになりがちですが、完治させる方法がない現状としては、長い目で見れば、輸液療法と同じくらい重要な治療といえます。
その他にも、ウェットフードを用いたりして飲水量を増やしてあげることも、良い管理方法です。
残念ながら慢性腎疾患には予防方法はありません。しかし、なるべく腎臓に負担をかけないようにする、つまり体重を適正に保つ(肥満は高血圧など、腎臓に過度の負担となります)、塩分やタンパク質の摂取を適正に保つため、また良質なタンパク質を摂取するために、良質なキャットフードを与えることなどは、慢性腎疾患の予防になりうるかもしれません。
また、慢性腎疾患は、早期発見することが非常に大切です。腎臓の機能低下が軽いうちに治療を始めた方が、より腎機能を長く維持することができるからです。
その早期発見には、定期的な血液検査や尿検査が有効です。中でも尿検査は、自宅で上手く採尿できれば猫にとって負担なく検査できますので、なるべく採尿できるように、日頃から慣らしておくと良いでしょう。

猫の下部尿路疾患は、血尿や頻尿、排尿時の痛みなど、いわゆる「膀胱炎」の症状を示す病気です。
猫の下部尿路疾患の主な原因には、細菌感染、尿路結石(膀胱や尿管、尿道に石ができる病気)などがありますが、実は最も多い原因が「特発性」すなわち原因が不明の下部尿路疾患です。
さらに下部尿路疾患の中でも、尿道閉塞という尿が出なくなってしまう症状は、時間がたてばたつほど命の危険にさらされます。猫がなんどもトイレで排尿姿勢を取るけれど、尿が出ている様子がない場合は、急いで動物病院を受診しましょう。
下部尿路疾患の治療は、原因によって異なります。
中でも尿路結石は、前述のとおり、緊急を要することがありますので、必ず動物病院で治療を受けるようにしてください。また、緊急状態を脱した尿路結石の猫や特発性下部尿路疾患の猫は、自宅での食事管理や生活管理が非常に重要になります。特に食事管理では、決められた療法食以外の食べ物を口にすることができないため、しっかり管理するようにしましょう。
これら下部尿路疾患は、お水の摂取量を増やすことで、ある程度予防が可能です。ウェットフードを用いたり、ドライフードをふやかしたりして、食事による水分摂取量を増やしてあげたり、あるいは家のいろんなところに飲み水を置いてあげるなど、水分を積極的に取れるように工夫してあげてください。
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